2016年 4月 19日

被災されている皆様にはお見舞い申し上げます。

14日に発生した熊本地震は大きな地震が連続して起こる為、災害復旧の手が中々入れない状況です。

通信に関しては、やはりこのような状況になった際には無線通信出来る携帯電話の有効性が目立ちます。

各携帯会社は熊本地震の被災者に対してはデータ通信量の上限を開放したり、料金の請求期限を遅らせる等、多くの支援対策を打ち出しています。

その支援策にも新しい試みがいくつか投入されているのでご紹介します。

1)ソフトバンク、気球に基地局設備を載せて飛ばし、臨時基地局を設置

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ソフトバンクは17日に福岡県八女市の矢部村高巣公園に臨時基地局を設置しました。この基地局は気球に中継基地局の機材を載せ、上空にあげる事で、山間部の利用者の通信障害解消や福岡ー阿蘇間の通信中継を行う事が出来るそうです。

実はこの気球による臨時基地局は東日本大震災の教訓を受けて開発されたもので、これまで訓練や試験での運用はされてきましたが、今回、満を持して実践投入となったわけです。

各携帯会社はこれまでも大人数が集まるイベントの際や災害時には臨時基地局を出していましたが、それらは機材を積み込んだトラックや1BOXカーでした。その為、高い建物や山の中での運用には十分な効果が得られない場合もあり、軽微な機材で高所からの通信が行える気球と言うアイディアが出たものと思われます。

2)公衆無線LAN各社、Wi-Fiの無料開放

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現在日本では多くの場所で公衆無線LANの利用が可能になっていますが、通常は契約している携帯会社のサービスとして運用されている物や無料で会員登録した物が殆どなので、これらと利用契約をしてない方は公衆無線LANサービス自由に使えないのが実情です。

しかし今回の地震被害を受けて、「無線LANビジネス推進連絡会」に加盟している熊本県内の公衆無線LANサービスは非契約者であっても無料利用出来る様に解放しています。

通常は各サービス毎に無線LAN接続に使用する接続先ネットワーク名は個別に設定され、そこに接続する際にはパスワードの要求をされます(パスワードなしで接続出来る場合でも、その後にブラウザを介してユーザー認証をする必要があります)が、無料開放されている接続先は「00000JAPAN」と統一した接続先名になり、パスワードなしで接続が可能になります。

この他の携帯電話各社の災害対策はこちらに纏めが掲載されています。

3)LINE、一般電話に通話出来るサービス「LINE Out」を1通話10分まで無料、しかし…

無料通話アプリのLINEには、一般の加入電話や携帯電話に格安で通話が出来るサービス「LINE Out」と言うオプションサービスがありますが、今回の熊本地震への対応策として、このLINE Outを1通話10分の限定で無料で利用出来る様にしました。

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一見すると非常に有益なサービスの様に見えますが、LINE Outの仕組みを知っている人からすれば非常に問題があると指摘され、Twitter等で批判が殺到しました。

災害時に安否情報を確認する際、電話での直接通話は交換機への負荷が膨大にかかる為、通話が出来なくなる事が間々ありますが、通話アプリはこうした点では交換機を介さない分、負担が少なく通話も繋がりやすい、と言う利点があります。しかしLINE OutはLINEからの発信を一般の交換機につないで加入電話や携帯電話と通話させるサービスである為、結果的に交換機への負荷を掛ける事になってしまい、しかもLINE運営側が「安否確認にご活用ください」と軽々に利用を促す様なツィートをした結果、より一層の通話混雑を招く結果となってしまいました。

声による安否確認はやはり安心感を産みますが、通話の為の機材、施設への負荷を思うと、メールや文字でのメッセージ等を優先して使用する事を考えた方がよさそうです。

4)意外と多い「電子書籍の無料公開」

ここ数年、電子書籍はじわじわと利用者が増えていますが、今回の震災に合わせて、震災に役立つ多くの電子書籍が無料公開されています。

1雑誌『ソトコト』を手がける木楽舎は4月15日、評論家の荻上チキさんが手掛けた『災害支援手帖』(税込1296円)の臨時公開版をWebサイトで無料公開しました。

荻上チキさんはこれまでも多くの災害現場での取材経験があり、こうした経験をまとめたのがこの本になります。どちらかと言うと、支援を受ける側より支援をする側の目線で書かれている内容が多いですが、災害の現場でも役に立つ情報もたくさん載っています。

また、東京都が編纂している防災時に役立つ情報をまとめた本「東京防災」の電子書籍版もAmazon KindleStoreやApple iBooks、楽天kobo等の電子書籍販売サイトにて無料で公開されています。

元々「東京防災」はwebページ上で無料で読めるPDF版を公開し、紙の書籍版は1冊140円で都内の書店で販売されていました。都民の為の防災情報を掲載した本ですが、災害時に役立つ、改めて気付かされる情報が多数掲載されています。

また、電子書籍版として一括ダウンロードが出来るので、一度端末に取り込めれば通信が出来ない状況になっても何度でも読み返す事が出来ます。

この他にも医療や法律問題、災害支援等の電子書籍本が多数無料公開されています

5)フリマアプリ「メルカリ」の災害時における想定外の使われ方にいろいろ問題が

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ここ数年、スマートフォンを使って簡単に私物を売りに出せるフリマアプリ「メルカリ」が人気を博していますが、今回の震災に乗じて想定外や規約違反すれすれの使われ方がされています。

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まず、「支援物資を無償提供する」と言う投稿が出ているのですが、これはメルカリのルールに違反しています(最低出品価格が300円と規定されている為)が、ならばと言う事で出品者と購入者をマッチングさせた後、取引をキャンセルにして費用を発生させないと言う手段が出てきたり、最低価格の300円で出品、購入者も300円を支払わせるけど、商品の荷物に300円を同封して返金する、と言う手間のかかる方法も出てきています。

メルカリのルールでは「購入者限定の出品」は規約違反とされています。つまり、被災者限定とか熊本県人限定の様な出品の仕方はそれ自体がNGになります。また現金を直接郵便や手荷物で送る行為は「現金書留」以外は認められていませんので、これもNGになります。

image2更によくあるのが「災害時に役立つ情報をメルカリの商品画像に投稿する」と言う物です。

これは値段が付いていても画像で情報が全て公開されているので実際に取引は行われない事になりますが、フリーマーケットとして出品商品の売り上げの10%を手数料として得ているメルカリとしてはやはり困った使われ方と言う事になります。

同様に被災者へのメッセージ発信にメルカリを使った例もあるそうですが、やはり上記同様に現実の売買が行われない使い方には問題があります。

また画像投稿だけを使う例として「支援に必要な物の一覧」と「それを届けてほしい場所」のメモを画像にして投稿すると言う物もありますが、これもメルカリの規約上では「宣伝の出品」と呼ばれる規約違反になります。

もっとも問題なのは「支援物資を私が持って行くので、私宛に送ってください」や「私にお金を送ってくれたら寄付します」と言う投稿です。

どちらも詐欺の様な臭いがプンプンする胡散臭そうな内容です。実際「私宛に送ってください」の投稿は「沖縄消防に物資を引き継いで熊本まで送る」と言う内容でしたが、これは実際に沖縄消防に問い合わせがあり、その様な事実はない旨の返答があり、詐欺である事が露見しています。

2011年に続き、今回も大きな震災です。関東圏に住んでる人間としては直接手助けできる事は少ないですが、少なくとも正しい情報の伝搬には寄与したいと思っています。

 

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